2013年1月10日木曜日

ある欧米企業トップとの対話

2012年のひとコマ。ある大手欧米メディア企業のトップと話をする機会をいただいた。世論を動かすほどの力を持つ会社でありそのトップがどのような考えで企業を動かしているのとても興味があった。

その方は自社のウェブサイトにブログを載せて仕事観や企業のあるべき観を綴っている。言っていることには共感できる部分も多いがかなりリスキーなことをする人だなと感じていた。

つまり、そのブログでは具体的な企業名も出して憚らないし、企業批判もする。顧客の側からしてみれば、批判された会社はこの会社とは取引をしないであろうし、現在の顧客でもトップはこう考えているが自分は違う、このような考え方をするトップが率いる会社に仕事は任せられないと仕事を継続してくれなくなる可能性も十分にある。
だから多くの企業のトップは自分の意見をあからさまに公開することはしないのである。

一番きいてみたかったことを訊ねた。

「顧客と自分の理念は必ず合致するとは限らない(多くの場合は合致しない)。自分の信条と異なることも仕事上は行わざるを得ないのではないか?その時どのように対処するのか。」

このような答えを頂いた。「信条とことなることをしなくてはならなかったことは創業以来一度もなかった。」

すばらしい答えであるが、失望した。

人それぞれが必ず違うように必ず仕事間では思惑のズレは生じるものである。特に会社がスタートしたばかりでは、自分も経験したが、まずは会社の生き残りをかけて死に物狂いでお客さんをとる。

もしかするとこのトップは本当に恵まれており、最初の顧客から現在まで同様の信条・思惑をもつ顧客だけと仕事をして事業を行えているのかもしれない。

顧客のニーズを正確に把握し、そのニーズを、社会・企業倫理に反することは別として、自社ができる限りの中で最大限実現化するのが企業のあるべき姿だと思っている。顧客のニーズは自分ではこうあるべき観とは少なからずズレはあるもの。

お客様相手の商売である限り、自分の信条を事業スタートの第一歩から100%貫き通すことは出来ないし、間違っているかも知れない自分の信条を省みて常に批判にオープンな姿勢で仕事に臨む、これが私の経験則。

まったくこのようなことがなかったとするトップの発言に、違和感をもってしまったのは自分の経験が普通でなかったからなのだろうか。