2010年6月10日木曜日

おじ

伯父は痴呆が始まっていると医師から告げられた。公務員などお堅い父の兄弟の仲で、UFOなどオカルトを愛し、ボートで冒険などしていた伯父は特異な存在である。子供三人いるが皆家をでて殆ど帰ってこないようである。短い日本滞在中、そんなさびしくしている伯父の助けになれればと思っている。戦後の混乱期、他の兄弟を支える為大学にいく機会も与えられなかった。

金はすべてでない。今日、祖母の家で見つかった戦時中の飛行機用の工具を持ち主である伯父と共に博物館に寄贈した。極めて貴重ということで、是非寄贈して欲しいとのことであった。収集家に売れば相当の金額になったのかもしれない。しかし、伯父は寄贈を選んだ。以前にも飛行機のパーツを寄贈した。伯父の少年のような純粋な心持に尊敬の念を覚える。

祖母があの世へ行ったことで掃除などあって5,6日手伝い汗を流した。お金をもらってしまった。拒んだのだが他の人にもあげているのでとのことであった。亡くなった祖母の貯蓄から出ているということで頂くことにした。ただ手伝った人の中には金との交換で労働を提供しようと考えた人もいたかもしれない。しかし、心の中でわだかまりが残っている。親戚が伯父にこれらの手伝いは金で払わなければとしきりにいっていたことが耳についた。

寄贈の際、博物館への連絡などをしたのだが、たいした仕事ではなかった。寄贈が終わり帰り道、伯父が2000円を私にくれた。僕のした分についてだという。受け取らなかった。

全て親切心で行ったことである。陳腐な言葉だがただ親戚の為に貢献したかった。全てが金銭化できてしまう世の中は悲しい。伯父の差し出したなけなしの2000円に涙が出そうになった。受け取らなかった。

受け取らなくて良かった。

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